美味しいもの楽しいこと
「ドラさんって甘いものお好きなんですねー」
いつものようにパルクレープに寄り、いつものように小娘と並んでクレープを食べる。最近ではすっかり当たり前のようになってるこの状態。
パルさんめ。なーにが『買出しに行ってくるから、ちょっくら店番頼むよ』だ。あからさまににやにやしやがって。
「好きじゃ悪いのかよブッ殺すぞコノヤロウ」
「いやーだってキャラ的に『ンな甘ったるいモン食ってられるか』とか言いそうじゃないですかー」
「うるせーな。キャラだとかキャラじゃないとか人のこと勝手に当てはめんのやめてくんない。俺は甘いものを愛するハードボイルドなんだよ」
「でも良かったー」
小娘は何が嬉しいんだかかにこにこ笑っている。ほっぺたにクリームつけてまあ、ガキかお前は。
「なにが」
「えー。だって美味しいものは一緒に食べた方が美味しいじゃないですかー」
「……ま、そうだな」
ちょっと迷ったが同意しておく。
メンマの屋台でいつものメンツとすするラーメンも、小娘と一緒に食うクレープも、一人で食べる冷めた食事より確かに美味かった。
「だからドラさんと甘いものをこうして一緒に食べられて楽しいなーって。へへー」
「ああそう」
「えー。ドラさんは楽しくないんですかー。つまらないんですかー」
「バカお前。つまんなかったらこうして食ってるわけねーだろ」
「……ということはつまり、鳴さんと一緒に食べると美味しいなー、楽しいなー、ということですね?」
「……ああ、じゃあ、まあ、それで」
「…………」
やつは驚いたようにぽかんと口を開けてこっちを凝視していた。つか口閉じろ口。中の食いモン見えてんぞ。
「……なんだよ」
「……ほ、ほんとですか?」
「だからそーだって言ってるだろーが。何回も言わせるなっつの。ブッ殺すぞコノヤロウ」
「うは!やーん、もー。これからもずっと一緒にご飯食べようだなんて、これはあれですか、プロポーズですか?」
「ハァ?」
「照れない照れない」
「ちょ、だから、お前なあ」
「あー!パルさーん、私ドラさんにプロポーズされちゃいましたー!」
「お、良かったなー鳴!」
いつの間にか帰って来てたパルさんに、鳴はやたらと楽しそうに報告している。つか、全部見てたわけじゃあねーよな。
「……おいピンク。お前いつ帰ってきたんだよ。にやけたツラで俺を見るな」
やかましい女どもはきゃーきゃー騒ぎながら次はデートだだの告白だのとピンクな話題に花を咲かせている。ピンクはこの屋台だけで十分だっつの。
「だからお前ら、聞けっつーのに」
ああもう、世界が平和でありますように
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